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空を仰げば目に映る鮮やかな青も、体を優しく撫でる透明な風も、揺られざわめく草木たちも、ここにはない。

見えるのは、どこまでも広がる果てない地平線と、それに色を添える七色の雲だけ。

からだは地上を離れて、ふわふわと空気のように流れ、漂っていく。

ここは始まりの終わり。

心の色だけで創られた、限りなく本当に美しい世界。



誰もたどりつくことのないどこか彼方、そんなあたたかな場所で、ふかいふかい淵に融けた、きみへ。






nevaeh





はっとして、眼を開けた。

まぶたを閉じた憶えはないのに、一瞬前の記憶が、あの暗闇だったのかさえ分からない。

目覚めを確かに告げるのはこの、白き両の手だけ。





《不変の力の執行者よ…汝は人に在らざる者なり…者なり…》

高さと低さを併せ持ち、まるで響くように耳に届く、とても懐かしい声を聴いた。


《久しいな》

〈…ほんの少し言葉を交わさなかったというだけで 我が字すら忘れてしまうの?〉



ぼんやりと光を放つ白い肌に、肩につくか、つかないかほどの長さしかない真っ直ぐとした髪。

吸い込まれそうな漆黒の瞳と、それと同じ色で純白の衣に縫いこまれた刺繍。

たったふたつの色だけを身にまとった少女は、音もなく立ち上がると、目の前にいる異形者の顔を見上げた。

《汝に隠し通せるようなことなどあろうか しかし 奇しくも人の子の形を為しているとは》

〈あの御方の姿を手に入れたくて〉

少女が自らの手を宙にかざすと、それはさらに抜けるような白さを帯び、輪郭だけを残してそのまま徐々に透けてゆく。

掌、続けて甲をひらりと眺め、そしてゆっくりと手をもとの位置に下ろすと、指先へ再びすうっと光が走った。

《自我に目覚めたとはいえ 個としてはあまりに未熟な存在だ 永くは栄えまい》

瞬間、少女の心を映すように、からだから放たれる光がろうそくの炎のように揺らめく。


〈…いつからか〉


異形者はものを映さない少女の瞳を覗き込む。

さらに言葉を紡ごうとして、少女は唇を動かすのをふと止めた。


《何を思うのだ》

《我らはあの果ての流れに融け 幾許かの時とそれ同等の自我を失った》

《だが流れを逸した汝は…》



つとこちらに向けられたその表情は凛々しく、同時にさらりと揺れた真っ白な髪を、慣れた動作で少女は撫でつけた。

その一連の仕草に、異形者はどこか胸騒ぎを覚え、瞳を曇らせる。

それでも、何も意に介さない様子で彼から目を背けてしまった少女へ、異形者はしばしの別れの言葉を送った。

《汝は望まれぬ 永遠を紡ぐ我らにそぐわないその願いは》

《いつしか終末を招く》



少女はそれに応えるように〈…友よ〉とだけ、呟いた。


少しずつ距離を増す少女の背中越しに広がる、すべてを飲み込むような漆黒の淵を、異形者はじっと見つめた。

《ほかに望むことなどとうにないと言った 彼の時の言葉を思い返せ》

《汝の字は…世界を世界足らしめる唯一の…》

少女から、異形者から見て、ふたりは同時に地平線の果てへと消えていった。









〈ここは果て〉

一歩踏み出すたびに、光の軌跡を残す素足。

〈世界の果て〉

〈我は永久の栄光を謳う〉



なぜならそれが私のすべてであるから



ああ、なんて温かな光だろう。

あの御方に近づくのにつれて、はっきりと意識が醒めていくのが分かる。

私は授かったこの力を遍く行使し、世界の成り立ちの全てを見届けてきた。

けれど、受け入れる側はその存在を知ることがあっただろうか。




私を創りだしてくださり、されどいちども言葉をかわしたことのない、あの御方。

いつもいつもここへ、その巨きな白い姿をみにきていた。

そうしていつからか、わたしは眠ることさえわすれたのだ。




…なぜだろう 気持ちがとてもはやる



許されるならば

とこしえのねむりからめざめたあと

はじめて目にするのはわたしであってほしい


これをねがうのがどうしていけないことなのでしょうか?





そうしておそるおそる ただ真っ白な光の中へ手を差し伸べた少女の先には
























いつか君と心で分かち合えたなら、どうか、教えて欲しい。

いつも、そばに君がいたことを。

ぼくがひとりではなかった、ことを。












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